君と夏の日、
炎天下に揺れる。
さながら水に溶けていく水彩絵の具のように、
水彩
炎天下に揺れる。
さながら水に溶けていく水彩絵の具のように、
水彩
「すーずーしぃー」
冷房のかかった医務室。
いつも通り肌に飛んだ秘色を取り除いた後、
彼女はそのまま涼んでいた。
「いつまでいるのセロくん。」
「もう今日は授業終わりなので」
「帰りなさい」
「いやですー」
「………冷房、切るよ」
切ってもいます。と言った。
あっそう、と彼は返し、きっとまだ当分は自分もここにいるのだろうと本を一冊取り出し、腰掛けた。
窓の外はこの部屋との温度差を感じさせる炎天下、
茹だる暑さに揺れて。
セミは、絶えず、その存在を示す声を。
「今日は、演習だったんですよ」
「うん」
「ペアを組んで、パートナーの鳥の色を織物に落として、二色のグラデーションに、って課題だったんですけど……」
「うん?」
「クロタンにまでヨーヨーの色飛ばしちゃって……」
なんだかんだで斑模様になっちゃいました。
はは。と乾いた笑い。
そしてがくっと頭を下げ、うな垂れる。
「……ペア、フェンネくんだったんだ」
「お願いして組んでもらったんです」
「ふーん」
「先生、突っ込みどころはそこですか」
「あれ、慰めてほしいの?」
「ちょっとだけ」
「次があるよ」
「………はーい」
頑張りまーす。と気の抜けた声が返ってきた。
やれやれ。
「大丈夫だよ」
また失敗したって、何回だって色を落としてあげよう。
何回だって「次がある」と言ってやろう。
あぁ。
こんなに優しくしているのだから。
少しくらい見返りを求めたい。
「フェンネくんって格好いいよね」
「そうですね」
「………」
「なんてったって彼は一年生の星ですからね」
「………そうだね」
所詮期待は裏切られ。
「フェンネくんと組まなくたって上手くいくよ」
「へ?」
「セロくんなら。きっと上手くいく」
今回の失敗がそんなに痛手だったのか、
今日はしつこくしょげて、
「何を根拠に」
訝しげな視線を寄越す。
オレは念を押してやる。
「上手くできる。絶対に。」
「………」
そうまで言うと押し黙る。
オレは視線で彼女を探る。
そうだ、フェンネくんの力なんか頼りにしなくたって。
そんな自分からお願いしたりしなくたって、
お願いしないで。
頼るのはオレだけにしといてほしいよ。
少しの沈黙。少しの思考の後に、
彼女は結論を出したらしく、顔を上げた。
ありがとうございます。
と、
彼女は深々と頭を下げた。
オレはなんだか申し訳なくなってしまった。
「………なんか先生素敵ですね、今日」
オレはなんだか、とても申し訳なくなってしまった。
冷房のかかった医務室。
いつも通り肌に飛んだ秘色を取り除いた後、
彼女はそのまま涼んでいた。
「いつまでいるのセロくん。」
「もう今日は授業終わりなので」
「帰りなさい」
「いやですー」
「………冷房、切るよ」
切ってもいます。と言った。
あっそう、と彼は返し、きっとまだ当分は自分もここにいるのだろうと本を一冊取り出し、腰掛けた。
窓の外はこの部屋との温度差を感じさせる炎天下、
茹だる暑さに揺れて。
セミは、絶えず、その存在を示す声を。
「今日は、演習だったんですよ」
「うん」
「ペアを組んで、パートナーの鳥の色を織物に落として、二色のグラデーションに、って課題だったんですけど……」
「うん?」
「クロタンにまでヨーヨーの色飛ばしちゃって……」
なんだかんだで斑模様になっちゃいました。
はは。と乾いた笑い。
そしてがくっと頭を下げ、うな垂れる。
「……ペア、フェンネくんだったんだ」
「お願いして組んでもらったんです」
「ふーん」
「先生、突っ込みどころはそこですか」
「あれ、慰めてほしいの?」
「ちょっとだけ」
「次があるよ」
「………はーい」
頑張りまーす。と気の抜けた声が返ってきた。
やれやれ。
「大丈夫だよ」
また失敗したって、何回だって色を落としてあげよう。
何回だって「次がある」と言ってやろう。
あぁ。
こんなに優しくしているのだから。
少しくらい見返りを求めたい。
「フェンネくんって格好いいよね」
「そうですね」
「………」
「なんてったって彼は一年生の星ですからね」
「………そうだね」
所詮期待は裏切られ。
「フェンネくんと組まなくたって上手くいくよ」
「へ?」
「セロくんなら。きっと上手くいく」
今回の失敗がそんなに痛手だったのか、
今日はしつこくしょげて、
「何を根拠に」
訝しげな視線を寄越す。
オレは念を押してやる。
「上手くできる。絶対に。」
「………」
そうまで言うと押し黙る。
オレは視線で彼女を探る。
そうだ、フェンネくんの力なんか頼りにしなくたって。
そんな自分からお願いしたりしなくたって、
お願いしないで。
頼るのはオレだけにしといてほしいよ。
少しの沈黙。少しの思考の後に、
彼女は結論を出したらしく、顔を上げた。
ありがとうございます。
と、
彼女は深々と頭を下げた。
オレはなんだか申し訳なくなってしまった。
「………なんか先生素敵ですね、今日」
オレはなんだか、とても申し訳なくなってしまった。
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