忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2025/07/18 18:02 |
神様と花ビラ
ゆらゆら。

花ビラはすぐに地面に落ちてしまうからその前に、





神様と花ビラ






花が地に落ちていく。

仕方の無いことだけど、花びらは踏まれて朽ちる。




わたしはもうすぐ此処を出ていく。

仕方の無いことだけど、思い出に揺れて切なくなる。
















放課後の医務室。
白いカーテンが揺れている。



ヨーヨーのピンクはちゃんとヨーヨーのもとにあり、
わたしの髪の色は黄緑、肌は肌色。
どこにもピンクは落ちていなかった。






「もうすぐ、卒業なのか。」





先生が背を向けたまま、ぽつりと呟いた。

何切なくなってるんですかと茶化そうかと思ったけど、
わたしだって切ない。

当たり障り無く返した。





「まぁ、卒業試験通ればですけど。」
「あぁ、それはどうかな。」
「先生……!」
「嘘だよ。」






「きっと通る。セロ君は落ちこぼれじゃあない。」















落ちこぼれのままが良かっただろうかと思わないでもない。

でもきっとこれが、正しく、続いていく未来。















「寂しくなりますね」
「何が?」
「私が、ここに来なくなったら」
「あぁ、まぁ、うん。」





ふぅ、と一息ついて。
頭を抱えたいくらい、それは切ないことだけど、
それはなんだか違う気がした。

今のこの空気を壊してはいけない。






「会えなくなるかな」
「まぁ、今よりは、」
「そうだよね。わざと失敗してここに来ることもなくなるのか」
「……ばれてました?」
「勿論。でもわかってて言わなかったからオレも同罪か。」






ちらりと目配せ。






「………先生、大分わたしのこと好きですよね。」
「セロ君もね。」
「ばかっぷるというやつですか」
「うわ、認めたくない。」















「卒業しても来ていいですか」
「え、どこに?」
「どこって、ここですよ。」
「えー………。」
「……そ、そんな嫌そうな顔されるとさすがにショックです。」
「やだよ。」
「なんで…!あ、じゃあ休日だけ会いましょう!」
「お断りだよ。」
「えっ、」
「っていうかさ、」

















「結婚しようよ。」















「は?」















「はっきり言わなきゃ伝わらないでしょ?セロ君、ニブいから。」
















ニブいと言われた。

言い返せなかった。

でもさすがにここまでストレートに言われたらわかった。




あぁ。

わたし、結婚するのか。
















「一緒に暮らすんなら此処に来なくてもいいし。休日だけしか会えないなんてオレは御免だね。」
「………わー。」
「何。」
「先生キザだ。」
「ちょっと頑張ったんだよ。」
















赤く。染まる。花は鮮やかに。

あなたは仄かに。
















「………テオ君の説得が大変ですね」
「あれ、それはセロ君の仕事じゃないの?」
「先生の、仕事です」
「じゃあやめよっかな………」
先生?
















「うそだよ」















ふ、と綻ばせた顔を



私は



生涯



忘れない。















花が綻ぶ音がする。


神様どうか。


どうか今開いた花が枯れませんように。
一生朽ちることがありませんように。






そして、わたしは、

開いた花ビラが、地面に落ちることのないように、














「セロ・レキセル?」
「へんだね」
「へんですね」
「でもいいよ。好きかも。」
「わたしも。」














祈りを込めて花ビラを、今、掴んだの。
PR

2007/09/02 19:43 | Comments(0) | TrackBack() | パレット

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<一万打 | HOME | 跳ねた水玉の色>>
忍者ブログ[PR]