なんて甘美な誘惑なんでしょう。
その言葉についうっかりと、うなずいてしまったのです。
カラー3g、手の平で溶け合う。
その言葉についうっかりと、うなずいてしまったのです。
カラー3g、手の平で溶け合う。
医務室でのことでした。
ちょうど、そのときそこに二人しかいませんでした。
なんとも居心地の悪い空気。
彼が口を開きます、
「ねぇ、」
「ヨーヨー」
彼女はそこにはいなかった。
なんでも教室に忘れ物をしたらしく、すぐ帰ってくるからと医務室にヨーヨーをおいてったのは、もう、十分は前のこと。
そして険悪なこの空気。
「怒ってるの?」
返事はジェスチャー。
(なぜ?)
「その、最近の一連のアレコレで」
(あぁ、それのこと。)
少しばかり言いにくそうにするのでちょっといらっとした。
でもその後に、たぶん、自分でも気づかないほど小さく、笑って、
「すきなんだよね」
ぼそり、と
独り言のように打ち明けた。
ヨーヨーはセロがここにいなくてよかったとおもった。
いなかったからこそグエルのこの発言があるわけだが。
「今の話、秘密ね」
「男の約束」
その言葉がやけに魅力的で、
ヨーヨーはうっかり、うなずいてしまった。
それにグエルが、ふ、と笑うと、
ガチャリ。
「ごめんね!待った?」
彼女のお帰りです。
「遅いよセロくん」
「すいません。見つからなくて」
「そしてなんで秘色まみれなの」
「実習現場にばったりと」
「馬鹿だなぁ」
「目、閉じて」
彼女がぎゅっと目を閉じて待っているなか、
軽くグエルが髪を撫で、
それを見ているヨーヨーに、
しー、と、人差し指を口に添え、秘密だと。
あぁなんだかやるせない。
大人気ない大人の恋なんて、
知ったことではないのに。
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