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2025/07/18 14:39 |
恋心の砂糖漬け

あなたを好きなわたしは、あなたといたくて。

わたしといると、あなたは可愛くなる気がする。

あなたが可愛いと、わたしはきゅんとする。

わたしはきゅんとすると、あなたを抱きしめたくなる。

あなたを抱きしめると、わたしはまた、あなたを好きになる。






恋心の砂糖漬け








   セロ君、」

「はい」

「何してるの」





デスクに落ち着いていた彼の不意をつくように、
彼女は後ろから腕を回し、彼を抱きしめていた。

それは医務室には珍しい光景だった。





「抱きしめたくなるときってありません?」

「ないよ」

「なんか、こう。だいすき!みたいな。」

「ない。」

「わたしだけかぁ……。」

「セロ君、くるしい。」





すいません。

彼女は一言謝ってぱっと手を放した。

彼はむすっとして後ろを振り返った。





「あんまり調子のっちゃ駄目だよ。」

「先生がちょっと冷たいのでのれてません。」

「それでよろしい。」

「調子にのらせてください。」

「お断りだよ。」





今度は彼女がむすっとして、

じゃあいいです。と言った。





「・・・・・・・・・・・・・・・・帰らないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・目をそらしたら負けかなって。
こんなので帰ったら、それこそ、大負けした気分になる。」
「あ、そう。」





二人して、
むすっとしたまま、にらめっこ。





「・・・・・・・・先生冷たい。」

「わがままな子は嫌いです。」

「大人気取りですか」

「失敬な。大人だよ。」

「先生は大人げないです。」

「なんとでも。」

「素直じゃない。」

「………。」

「やる気ないし、ゆるゆる。」

「……………。」

「・・・・・・・でも好きなんですよね。」






目をそらした。

と、いうより、視線がはずれた。


しかしそれは不可抗力。





だってそのはず。




抱きしめられて見えるのは肩越しの景色。










「……先生、苦しいです。」

「ごめん。やっぱりあるかも、抱きしめたくなるとき。」





彼女は目を丸くして、
それから、笑って言う。





「やっぱり。そうでしょう?」





彼はバツが悪そうに顔をしかめるのだ。
彼女を抱えながら。





「わたしの勝ちですね」

「え、俺負けたの?セロ君に。」

「たった今。わたしを抱きしめたことによって。」

「えー。」

「してやったりな気分です。」

「それでもいいよ。それでもいいから、」

















「さっきの、”だいすき”ってやつ。もう一回言って。」















いや、それは。と彼女がたじろぐと、

言うまで離さないけどね。と彼が言い足した。





さすがに、





離さなくてもいい。とは、彼女はまだ言えなかった。
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2007/10/13 19:30 | Comments(0) | TrackBack() | パレット

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